テレビとネットをめぐる新たな動きがこの夏ひっそり3連発

更新:2011/00/00

  地デジ移行も東北3県を除いて無事かどうかはなんとか完了した。

積み残しがどれくらいあるのかは正確には掴めない状況だと思うが、

少なくともクレームの嵐ということはなかったようだ。そんな今年の夏、

地デジ化の陰でテレビとネットをめぐる新たな動きがひっそり3連発。

果たしてその行方は如何に。

 

 

3つのネットサービス


地デジ化が完了した一方で、テレビとネットの融合に関して立て続けに3つのサービスが発表された。

 

民放5局と電通が共同でVODサービスを推進

http://www.dentsu.co.jp/news/release/2011/pdf/2011090-0803.pdf

電通とJ:COMがVODサービスにおける新たな広告モデル「CM割」を開始

http://www.dentsu.co.jp/news/release/2011/pdf/2011089-0729.pdf

Huluの動画配信サービスを日本向けに提供決定

http://www.hulu.jp/

http://blog.hulu.com/2011/08/10/hulu-heads-to-japan/

 

 

テレビ局が行う番組ネット配信サービスはこれまでも非常に多く存在している。

Wikipediaに掲載されているものは以下の通り。

NHKオンデマンド(日本放送協会(NHK))

日テレオンデマンド(日本テレビ)

第2日本テレビ(日本テレビ)

TBSオンデマンド(TBS)

フジテレビ On Demand(フジテレビ)

フジテレびーびー(フジテレビ)

フジテレビ無料動画サイト『見参楽(みさんが!)』(フジテレビ)

テレ朝動画(テレ朝BB内、テレビ朝日)

あにてれシアター(テレビ東京)

トレソーラ(トレソーラ - TBS・フジテレビ・テレビ朝日3局の共同出資) - サービス終了

テレビドガッチ(プレゼントキャスト - 民放キー局5局と広告代理店4社の共同出資)

スカパー!動画(スカパーJSAT)

スカパー!Netてれび(スカパーJSAT) - 2010年6月30日サービス終了

 

お分かりの通り山ほどあるのだが、すでにサービスを終了していたり、

風前の灯となっているものなど、うまくいっているとは言い難い。

止めるに止められないサービスも少なくないと聞く。

 

 

なぜ失敗に学ばないのだろう


では今回の3つのサービスはどうだろうか。

Huluはテレビ番組も含めたいわば動画ポータルサイトで、アメリカでは広告収入が2.63億ドル、

100万人程度の有料視聴者を獲得している。

広告モデルか有料モデルかで主要株主であるABC、NBC、FOXの間で意見が合わず、

いよいよ売却される見込みである。

売却先にはApple、Google、Amazon、Yahoo!などの名前が挙がっている。私も米国に出向いた時にはよく視聴しているが、突出した機能があるわけでは無く、

ひたすら優れたユーザーインターフェイスによって維持されているものと思われる。

日本進出の際にはアメリカのテレビ番組を持ってくるのか、

それとも日本のテレビ局との提携が進むのか現時点でははっきりしない。

前者の場合は既存の番組配信(販売)のルートとどう棲み分けがなされるのか。

後者の場合はテレビ局やその先の権利者の了解を取り付けることが出来るのかがまったく見えない。

些細なことであるが、同社の日本の準備サイトにある人材募集に関する記載を見る限り、

典型的な英語圏のメディア企業が陥りがちな採用方針のようで、

個人的にはうまくいかないだろうと予想している。

 

J:COMの「CM割」は、VODサービスにおいてCMを強制視聴させる代わりに、

視聴料金を割り引くというサービスである。これに関して私が思う問題点は2つ。

一つはそもそもVOD視聴の動機をどうやって作り出すのかという点。

これについてはいかなるコンテンツを山ほど並べたところで、それだけでは見たいという動機など発生しない。この点についてはすでにさまざまな場面、サービスにおいて屍累々で証明済みである。

二つめはCM視聴によって無料が成立しているテレビに対して、

割引という名の有料視聴は受け入れられないだろうという点。

かつて国際電話で最初にCMを聞かせることで、通話料金を割り引くといったサービスが

全く受け入れられなかった例や、あのライブドアは設立当時に無料のISPだったが、

結局有料ISPには勝てず、ホリエモンに買収された例が思い出される。

 

民放5局と電通とのVODはまだそのサービスの実態が見えないので何とも言えない。

リリースや報道を見る限り、「禁断の領域」に踏み込もうとしているとは思えない。

 

 

これが答えだと私は思う


禁断の領域とは何か。これも2つ。一つはタイムシフト視聴の視聴率計測と、

それによるマネタイズのためのCM差し替え管理である。もうひとつは域外再送信だ。

いまならばハードディスクレコーダー、近未来にはクラウド上に

全チャンネルの全てのテレビ番組は放送後直ちに記録される。

これらをタイムシフトで視聴させる時に視聴者と取引(すなわちビジネス)をする。

特定の番組だけを全くのオンデマンドで視聴する場合は1視聴につき100円程度を課金する。

また例えば音楽番組だけとか、スポーツだけといった具合に、

例えば1月以内に放送された各チャンネルの番組をジャンルごとにタイムシフトストリーミングで配信する。

これはオンデマンドでは無く、新たなチャンネルが作られたように考えればいい。

「日テレミュージックチャンネル」「フジテレビドラマチャンネル」といった具合だ。

これは決まったタイムテーブルを局側で編成しCMも同様に管理される。早送りも巻戻しも出来ない。

その代わり、完全無料だ。緊急ニュースやテレビ局側がリアルタイムで見てほしい番組が放送される時は、

タイムシフトチャンネルもリアルタイム本編と同じ編成になる。

これらストリーミングチャンネルの数や内容、リアルタイム視聴への移行タイミングがまさに編成の妙だ。

この方式の優れた点は、これまでのテレビの営業方針やルールを

1ミリも変える必要がないということだ。

視聴者にとってはニアオンデマンド的にリアルタイムで見逃した番組に触れる機会が飛躍的に増える。

そしてそれらの視聴状況はすべて計測される。

現在の視聴率と同じように全戸測定の必要は無く、サンプリングデータでいいはずだ。

これら一連の禁断の領域を実現するための技術的課題はすでに何も無い。

 

域外再送信は、期せずして東日本大震災においてラジオでは実現された。

Radikoが一定期間、エリアを撤廃したのだ。面白いことに、

この時の全国からのリスナーの反応に

「これなら全国に通用する」と自信を持ったのが各地の有力なラジオ局だ。

もちろんより一層警戒感を強め、保守的になった局もある。

全ての局がネットで全世界に放送しなければいけない理由は無いが、

やりたいならやればいい。単純にそれだけのことだ。

事実、送信出力わずか20ワットのコミュニティFM局の中には、

24時間全世界に向けてインターネットでサイマル放送を行っている局も多い。

コミュニティ局に出来てFM局やテレビ局にそれが出来ない合理的な理由があるなら、

ぜひ聞いてみたいものだ。権利云々を言う人がいるがそれは言い訳に過ぎない。

最初から全国を想定した権利処理をするか、あるいは問題になるものは使わなければいいのだ。

これもまた事実、ネットでサイマル放送している局ではソニーやユニバーサルの楽曲を一切オンエアしない。

これはレコード会社がネット配信を禁じているからであって、使わなくてもビジネスは成立する。

全ての放送局がネット配信を始めてどこの局からも楽曲が流れなくなって一番困るのは誰か、

火を見るよりも明らかである。

 

最後に民放5局がやっている番組配信サイト「テレビドカッチ」のサイトに記載されている内容を

 そのまま記載しておこう。

 

地上波テレビ局【日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京】でつくる、

テレビ番組配信サイト。

テレビ局がインターネットで配信している番組や動画コンテンツを、

ここから、探せて、見られます。

また、検索機能を備えた電子番組表はもとより、

毎日更新される最新のテレビ関連ニュースや動画、

各種スポーツのハイライト動画から

各局がプロデュースする映画情報にプレゼント・・・

各局が厳選した最新の情報や動画コンテンツが満載です。

テレビを見る前に。

もっとテレビを楽しむために。

テレビを見た後に。

もっとテレビを楽しむために。

テレビ局だからこそ作れる、

テレビをもう一歩面白くするインターネットサイト。

 

全くその通りだ。しかし手法が完全に間違ってる。

 

江口 靖二

デジタルメディアコンサルタント
デジタルサイネージコンソーシアム専務理事
デジタルサイネージジャパン実行委員

 

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