マルチスクリーンとHTML5がもたらす大激震

更新:2011/11/01

スマートフォンやタブレット端末が話題となっています。このことは単にモバイル端末が高機能化することだけと思われがちではそうではありません。これら様々なデジタル機器が生活シーンに入り込んでいくと、メディア環境が大きく変わっていくのだと思います。そしてそれは、テレビなどの放送メディアも例外ではありません。

 

こうしたデジタルデバイスの多様化は、マルチスクリーンという言葉で表現されます。9月にベルリンで開催された世界最大の家電見本市IFAや、オランダで開催された国際放送機器展IBCでもこうした流れが顕著なのです。

 

スマートフォン、タブレット、パソコン、スマートテレビ、デジタルサイネージといったスクリーンが生活動線上の様々な場面で利用されるようになるわけです。これらは共通のCMS(Contents Manegement System)でコントロールされます。CMSには追加の概念としてAMS(Application Manegament Sysytem) といったものが付加されるはずです。もちろんマルチスクリーン対応のオーサリングやエンコーディングツールが必須です。IBCではIrdeto社がエンドツーエンド TV Everywhereのソリューションを発表したり、Googleが買収するMotorola MobilityはMedios Multi-Screen Service Management Softwareを発表しました。Googleのモトローラ買収は、アップルのiPhoneへの対抗のための携帯電話事業の拡大と捉えられがちですがそうではありません。モトローラは通信機器だけではなくケーブルテレビやIPTVのセットトップボックスのシェアが高く、Googleの狙いはまさにマルチスクリーンにあるわけです。

 

ハードウエアに目を向けると、すでにスマートフォンに搭載されているCPUと、タブレットやパソコンのCPUに性能の差はありません。違いはスクリーンの大きさだけです。このスクリーンサイズの違いは可搬性の差となり、生活の様々な場所にインターネットが入り込んでいくわけです。かつてのようなCPUのスピード競争はすでに意味がなくなりつつあります。なぜならこれらを扱うのは人間であり、人間の理解できる文字や映像は今のレベル以上のCPUを搭載しても意味が無いからです。事実iPhoneに搭載されているRetinaディスプレイは人間の目の認識出来る限界に近い解像度を実現しています。

 

こうなるとますます生活の中に高性能なデジタルデバイスが生活の中に浸透していきます。マルチスクリーン時代になると、先ほど挙げた機器類はたとえばAndroidのような無料のOSで動作します。OSが制約されると逆にハードウエアも同時に制約を受け、かつ価格競争に陥ります。つまりGoogleもメーカーも誰も儲からないという構造です。しかし、こうしたマルチスクリーンにコンテンツを出したいとか、企業が生活者とコミュニケーションをしたい、というニーズは明確に存在します。なぜならマルチスクリーン化によって従来のマスコミュニケーションよりも密接なコミュニケーションが期待できるからです。マスコミュニケーション時代は送り手も受け手も、限定されたパターンしかないのでコミュニケーション設計は比較的容易でした。ところがマルチスクリーンになるとコミュニケーションパターンはこれまでの3乗倍から4乗倍に一気に増加します。そこで登場するのがこれら面倒な作業を代行してくれる人。これが実は代理店です。あるいは代理店機能です。これまで電通や博報堂が担ってたのと同じことを、すごく小さい単位で膨大な量を処理することのできる新しい広告代理店的な存在が必要となります。

 

話をマルチスクリーン端末に戻すと、スマートフォンもスマートテレビもデジタルサイネージも同じハードウエアで、同じOS上で動作します。更にインパクトがあるのはHTML5の脅威です。HTML4まではMarkup、すなわちWEBサイトの記述を規定していたわけですが、HTML5ではMarkupに加えてAPIを規定できるようになります。これはアプリケーションがブラウザだだけで動作するということを意味するのです。

 

HTML5によって、これまでのようにパソコンはもちろん、スマートフォンやデジタルサイネージのためだけに閉じた専用システムや専用アプリケーションは不要となる。ブラウザだけでなんでもOKという時代がやってくるのです。こうなるともはやテレビだけのシステム、テレビのためだけのコンテンツ作りといったことで通用しなくなる、こんな時代がもう目の前まで来ているわけです。


江口 靖二

デジタルメディアコンサルタント
デジタルサイネージコンソーシアム専務理事
デジタルサイネージジャパン実行委員

 

 

 

トップページへ戻る